肛門科の選び方

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みのり先生の診療室 佐々木いわお院長ブログ「過ぎたるは及ばざるにしかずだよ、佐々木君」

コラム

肛門科の選び方

2013年07月01日 更新

肛門科の選び方

皆さんは、肛門科を受診する場合、どのような理由で病院を選びますか。

  • 便利だからとりあえず近くの病院で…
  • 大きな病院だから安心できそう…
  • 患者さんが多いようだからきっと良い病院なんだろう…
  • 外観や、ホームページの印象が良かったので…

多くの方がこのような理由で病院を選ばれているようですが、そんなに簡単に選んでしまって、本当に大丈夫でしょうか。

生涯付き合っていくことになる大切な場所

人生において、大きな選択をする機会がいくつかあります。
たとえば、受験、就職、結婚、マイホームの購入などですが、場合によっては“肛門科選び”も、その1つになるかも知れません。

「なんと大げさな……」と思われるかも知れませんが、決して大げさな話ではないのです。
ちょっと想像してみてください。
“不安や痛みの少ない治療、治療後も適切なサポートのある生活”と、“治療中・治療後も不安の残る生活”とでは、一生涯においてずいぶん大きな違いがあると思いませんか。

もちろん、市販の薬で簡単に治る場合もあるでしょうし、どのような肛門科で治療を受けてもかわりなく完治できる疾患もあるでしょう。 ですが、手術を必要とするような重症の患者さんにとっては、その医師の知識や技術によって、苦痛の度合いや術後の経過が大きく異なる場合もあるのです。

まずは、出来るだけ多くの情報を集めましょう

いろんな人の経験談や、評判、地元の口コミ情報、治療実績、施設の沿革などは病院選びの大切な手がかりです。
お身内の方や信頼のおける知人、実際に診察や手術を受けた経験のある方、または身近にそのような経験をした人がいる方、もしくは、親身になって相談にのって下さる掛かりつけのお医者さんなどから、出来るだけ多くの情報を集めましょう。
なかなか人には相談しづらいところもありますから、書籍やインターネットを利用することも1つの方法です。
病院のホームページには、医師の詳しい経歴や力を入れている診療科目についての情報もあり、参考にできる部分もたくさんありますが、確実でない情報もたくさんありますので、慎重に判断することが大切です。

ここだと思える医療施設が見つかれば、勇気を出して早めに受診してみましょう。

診察のようすや話し方などから、その医師の知識、技術、経験、そして人柄などを伺い知ることが出来るかもしれません。同じ待合室の患者さんなどから、参考になるお話が聞けるかもしれません。

治療の方法については、ご自身が納得いくまで説明を受け、その医師を信頼して治療や手術を任せることが出来るかどうか、しっかりとご判断ください。

大切なことはその医師を信頼できるかどうかです。
少しでも不安があれば、別の医療施設を受診してみることも必要です。

肛門科選びの予備知識

ここから先は、適切な判断をしていただくための予備知識です。説明が細かくなりますが、誤解が生じないように最後までお読みください。

肛門科は、専門性の高い科です

肛門科というのは、外科の一領域ですが、専門性の高い科です。

詳しくは、外科の中の、消化器外科の中の、大腸肛門外科の一分野をさす言葉です。

もちろん内科の中にも消化器内科があり、その中には大腸を専門とする医師もいますが、手術をしない内科医には、手術治療の多い肛門疾患を専門にすることは困難です。
では、大腸肛門外科医なら、誰でも肛門の治療や手術が同じレベルで出来るのかというと、そう簡単なものではありません。肛門病治療についての専門的な知識や技術を身につけるためのトレーニングが必要です。

実は肛門疾患については、医学部教育においてはほとんど学ぶことがありません。そして外科研修においては、大腸疾患は経験する機会があっても肛門疾患を診る機会は少なく、肛門を専門とする指導医のもとで学ぶ機会などはまずありません。
肛門病治療のトレーニングには、肛門疾患のたくさん集まる施設に勤務して経験を積むことが非常に有益です。手術見学や学会で勉強することも有益ですが、根本的に違います。実際に勤務すると治療の難しい疾患を含めて、その施設の全貌を経験できます。
このような施設(社会保険中央総合病院 大腸肛門病センター、松島病院、高野病院……)で行われているのは標準的治療なのですが、その内容は非常にハイレベルで洗練されたものです。むしろ、そのような施設で行われている治療であるために、それが標準となり、他の一般的な施設の目標となるのです。
専門医は独立後も自己研鑽して様々なオリジナリティーを獲得して独自のスタイルを確立してゆく訳ですが、その施設での経験を基準に自己研鑽してゆくのが一般的です。

ところが、このように非常に高い専門性が要求される肛門科ですが、法律上は“肛門科”の看板は医師免許があれば誰でもあげることができます。

同じ肛門科の医師でも、どれぐらい肛門疾患の治療に精通しているかには大きな差があるのです。

“肛門科の専門医”とは?

現在、日本大腸肛門病学会認定の大腸肛門病専門医には、以下の3種の専門領域があります。

  1. 内科・放射線科系(Ⅰ)
  2. 外科・大腸領域 (Ⅱa)
  3. 外科・肛門領域 (Ⅱb)

肛門科の専門医とは、「日本大腸肛門病学会認定の大腸肛門病専門医のうち、3.の外科系肛門領域(Ⅱb)を専門領域とする医師」を意味しており、全国で250名程度とごく少数で、非常に専門性の高い領域です。
この“肛門科の専門医”であれば大抵の場合は肛門疾患の治療に精通しているものと思われますが、必ずしもその技術を保証するものではありません。また、これとは逆に専門医としての認定を受けていなくても、有能でしかるべき技術を身につけている医師もいますので、あくまでも一つの目安としてお考え下さい。

日本大腸肛門病学会のホームページでは大腸肛門病専門医の名簿が公開されています。ただし、2013年現在では、各領域までは明記されていませんので、外科系肛門領域(Ⅱb)の医師であるかどうかの判断はつきません。
そのうえ、女性医師は結婚後も混乱を避けるため旧姓を名乗ったり、読みにくい漢字の名前をひらがなやカタカナに変更して仕事上の名前としている場合もありますので、名簿を探しても氏名が見当たらないこともあります(“佐々木みのり”もそうです)。
病院の待合室や診察室に“専門医取得証明書”などが貼ってある場合もありますが、最近の専門医取得証明書には「肛門科領域」と記載されなくなったので、何科の専門医であるのかわからない場合もあります。

現在のところ、その医師が“肛門科の専門医”であるかどうかを、第三者が確実に知る方法はありません。「大腸肛門病学会の外科系肛門領域の専門医(Ⅱb)を持っておられますか?」と、その医師に直接たずねてみるしかありません。

誰にでもあげられる“肛門科”の看板

これまでにも述べた通り、医師であれば誰にでもあげられるのが肛門科の看板ですから、ひとくちに肛門科と言っても、その中身はさまざまです。
では、いったいどのような“肛門科”があるのでしょうか。
看板の実例から、その違いを見てみましょう。

1.◯○肛門科
肛門科のみを専門に扱う施設です。
多くは肛門科の専門医が行っているものですが、専門医をもっていなくても治療実績のある医師もいます。
2.◯○肛門科・胃腸科
おそらく最も多いのがこの看板です。
このような場合、「肛門科の医師が大腸も診ている」、もしくは「大腸の医師が肛門も診ている」両方が考えられます。
3.○○内科・肛門科、○○外科・胃腸科・整形外科・放射線科・肛門科、○○肛門科・整形外科
1人の医師がいくつもの科を受け持っている場合と、それぞれに担当医が異なる場合があります。
4.○○病院 外科・肛門科
いわゆる大病院や総合病院の中にある肛門科です。
これも肛門科の専門医が担当している場合と、外科の医師が担当している場合の二通りがあります。
あるいは非常勤で、肛門科の専門医が担当する場合もありますし、命に関わる手術ではないために若手の外科医が執刀する場合などもあります(しかし、決して簡単な手術ではありません)。

いかがでしょうか。例えば、手術をすることがない内科の医師でも肛門科医を名乗ることはできるのです。
そのようなところでは、手術が必要となれば改めて適切な医療機関に紹介されることになるでしょう。それでも、なかなか受診できずに状態を悪化させてしまうことを考えれば、身近なクリニックなどで気軽に受診できることは、痔に悩める人たちにとっては有難いことかもしれません。

受診の際や、手術を受ける機関を決める際には、ご自身でしっかり判断してください。

混んでいる病院が良い病院??

待合室にたくさんの患者さんが溢れかえっていると「この病院は流行っているな〜」と思われがちです。ですが、施設の良し悪しを「混んでいる」という理由だけで判断しても良いのでしょうか。

まず、病院の混み具合は、通院する頻度や治療経過の良し悪しに大きく左右されます。
ところが、通院頻度は治療の方針により様々に変化するものです。経過不良で通院している患者さんが多くても、実は難しいケースが集まるハイレベルな施設だったということもあるでしょう。
単にその病院の流行り具合を患者数で比べるならば、“初診患者数”がひとつの目安になるかもしれませんね。

でも、流行っていれば良い病院かというと、難しい問題なのです。

やっぱり大切なのは、「ご自身が納得できるかどうか」ではないのでしょうか。

“最新”=“最善”の治療ではありません

どんな世界にも「流行り」というものがあります。

昔は、痔核の手術といえば“ホワイトヘッド”といって、どの施設でもごく普通に行われていた手術でした。
ところが、術後数年たってから肛門の障害が出ることがわかり、今となっては「行ってはならない手術」となってしまいました。
当時の医者がこのような結末を予測したでしょうか。誰もが最善の手術法であると確信して行っていたに違いありません。皮肉な話です。
こういった話はなにも肛門科に限ったことではありません。薬害AIDS、薬害肝炎、今問題になっていることも、当時はよかれと思ってした結果です。

新しい治療法には、20〜30年後がどうなっているのか、というデータがありません。今は良くても年数がたつとどうなるかわかりません。副作用は? 合併症は? 肛門機能は大丈夫? といった心配がつきまといます。
ですから、必ずしも最新のものが良いものとは限りません。もちろん、何の問題も生じることなく、最善の治療となる場合もあるでしょうし、まだ、発展途上にあり結果が出てないとも言えます。
けれども、それらのリスクを十分に理解し納得したうえで治療を受けられている患者さんがどのくらいいるのでしょうか。

「新しい治療法にはリスクがある」ことをよく理解したうえで、治療を受けられることをおすすめします。

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